YouTubeの海を彷徨っているとき、ふと耳を奪われ、そのまま動けなくなってしまうような音楽に出会うことがあります。
今回ご紹介したいのは、台湾の実力派シンガー、**林志炫(テリー・リン)が中国の人気番組『我是歌手(I Am a Singer)』で披露した『煙花易冷』**のパフォーマンスです。
1. 原曲を超えた?伝説のカバー
この曲はもともと、中華圏のトップスターである**ジェイ・チョウ(周杰倫)**の名曲。作詞は、その詩的な表現で知られる鬼才・**方文山(ビンセント・ファン)**が手掛けています。
ジェイの原曲も素晴らしいのですが、林志炫によるこのカバーは、彼の代名詞とも言える「クリスタル・ボイス」と圧倒的な声量、そして繊細な表現力が相まって、また別の次元の感動を呼び起こします。
2. 歌詞の背景にある、あまりにも切ない物語
タイトルの『煙花易冷(えんかいれい)』とは、直訳すると「花火は冷めやすい」。転じて「華やかなものは、はかなく消え去りやすい」という意味を持っています。
歌詞の舞台は、南北朝時代の北魏の古都・洛陽。 古典『洛陽伽藍記』にインスパイアされたといわれるそのストーリーは、次のようなものです。
かつて戦地に赴いた将軍が、愛する女性に「必ず戻るから、伽藍(寺院)で待っていてくれ」と約束をします。しかし、戦乱の中で将軍の帰還は遅れ、数十年が過ぎてしまいました。
やっとの思いで洛陽に戻った将軍が見たのは、廃墟となった街。そして、彼を待ち続け、出家して亡くなった女性の物語でした。
この背景を知ってから聴くと、一言一言の重みが変わります。「雨纷纷(雨が降りしきる)」「故里草木深(故郷は草木が深く茂っている)」という歌詞が、過ぎ去った時間の残酷さを物語っています。
3. 林志炫の歌声が描く「静寂」と「激情」
イントロの静かなピアノから始まり、林志炫の歌声が重なると、一瞬にして空気が張り詰めます。
彼の歌い方は、決して感情を爆発させるだけではありません。サビの「听 青春 迎来笑声(聴け、青春が笑い声を迎えるのを)」というフレーズでの、空に突き抜けるような高音。そこには、切なさだけでなく、どこか気高ささえ感じられます。
聴き終わった後、まるで一本の悲恋映画を観終えたような、深い余韻に包まれます。
おわりに
言葉がわからなくても、メロディと歌声だけで胸が締め付けられる。音楽の持つ力って本当にすごいなと改めて感じさせてくれる一曲です。
もし、静かな夜に一人で何かに浸りたい時があれば、ぜひこの動画を再生してみてください。きっと、あなたの中のどこかに眠っている「忘れられない情景」が呼び起こされるはずです。